佐藤哲三「みぞれ」
八幡宮の参道をちょっと横にそれた所にある神奈川県立近代美術館は、連休の賑わいとは無縁の静かな空間だ。
鎌倉の予想以上の人混みに辟易した私は、「日本近代洋画の名品選」と題された催しの看板に惹かれて、ちょっと寄ってみたのである。
そこで見た絵の中で一番インパクトがあったのがこの絵。
佐藤哲三と言う画家は初めて知った。この絵が日本の油絵の中でも傑作の一つと数えられていることももちろん知らなかった。
この絵は死ぬ1年前に病魔と闘いながら書いたとのこと。全体の重苦しさ、辛さはそこから来ているのだろう。寒々とした雰囲気や暗い色合いには、「みぞれ」の題は相応しく思えた。
この絵の特徴は添景としての人物だろう。 水田だろうか?曇った空を映した水の間のあぜ道を人々が急ぐように歩いている。
私が人を入れた風景を撮るのが好きなのと似ていると思った。こんなすごい絵と素人写真を一緒にするのはおこがまし過ぎるのは承知で言えば、私が撮る、人を入れた写真の良さと言うか、意味をこの絵が教えてくれた気がする。
人を入れることで風景がドラマになるのだ。
久しぶりに鎌倉で写真を撮ろうと思って家を出たのだが、今日は何をどう撮ろうかと言うことがはっきりしていなかった。そのもやもやを察知した趣味の守護霊が、今日はこの美術館に私を導いてくれたような気がした。
参考リンク:EPSON~美の巨人たち~佐藤哲三「みぞれ」
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