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2009年8月 1日 (土)

「コンタクト」

休日にふと見たくなって蔵書DVDの中から久しぶりに見てみたシリーズ。

カール・セーガン博士の原作での壮大なラストは再現されていないものの、原作の精神を余すところ無く、それを映画的な表現で描ききった手腕はさすがのロバート・ゼメキス。

科学者として、証拠のないものは信じないと言う主人公のエリーの恋人が、若い宗教家。

彼は、存在する証拠がない神は信じないと言う彼女にこう聞く。

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「お父さんを愛していた?」

「ええ、とっても。心からね」

「その証拠は?」

「え?・・・」

これはこの映画の中でも私が一番好きなシーンだ。

かくして彼女は、科学者として異星人から送られた設計図に基づいて建造された「マシン」に乗り込んで、単身宇宙に行き、異星人に会って戻ってくる。

しかし、戻ってきた彼女の貴重な体験を証明する証拠を、異星人は何一つ残してくれなかった。

彼女は主張する。「証拠はない。しかし全身全霊で自分はこれを体験してきた」と。

皮肉なことに、その言い方は、若い宗教家が神に会ったと言う体験を彼女に語った状況と何一つ変わっていなかったのだ。

と言う話。

この話は異星人遭遇もののSFと言う形を借りながら、そのテーマは科学と宗教の話である。

原作者カール・セーガンは、NASAで宇宙開発の立役者として活躍した科学者である。その一方この「コンタクト」の原作を読むと分かるように、この人は宗教界とも密接に交わり、その方面の造詣も深かった。

「コンタクト」の原作では、映画では描かれなかった衝撃のラストがある。エリーはついに自分の信じる科学の方法で、自分の体験を証明するのだ。

カール・セーガンはこう言いたかったのだと思う。

「神はいるだろう。いるのなら、何故皆が分かる方法で堂々と出てこないのか? それならば私が私の方法であなたに会いに行きますよ!」と。

今、天国で彼は神とどういう対話をしているのだろうか。

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