「ウェブ進化論」
私が若かった頃、渋谷駅の構内で「私の詩集を買って下さい」と言って立っている女子学生がいた。
大昔には、金のない個人が自分の書いたものを多くの人に見てもらうには、そんな手段しか無かった。
インターネットが出来てからは、誰もがホームページを立ち上げて文章を書きさえすれば、世界中の誰かに見てもらえる可能性が生まれた。
ただ、その時点ではそれはまだ「可能性」に過ぎず、インターネットと言う大海の片隅でちっぽけなホームページを開いても、それが多くの人に知られるための「手段」が無かった。同時に、ホームページを作ること自体も技術的なハードルが高く、誰もがすぐにできると言うものではなかった。
しかし、ブログと言う表現手段と、グーグルと言う検索手段によって、インターネットと個人との関わりは革命的に変わった。
誰もが詩集を作るよりもやさしく文章を著し、また渋谷の駅頭よりも遙かに多くの人にそれを見てもらえることが、「可能性」だけではなく、リアルな現実になった。
先日、新しい携帯電話の記事を書いただけで、突発的に多くの読者がついたことから、私はそれを実感した。
今は、興味のあることを書きさえすれば、必ず同じことに興味を持つ不特定多数の人々とつながるのだ。
しかもそれができるのは優秀な技術を持った人ではなく、また巨大な資本を持った企業ではなく、1個人、誰でもだと言うところが、本当にすごいことなのである。
この「ウェブ進化論」の中で筆者は、革命とは「持たざる者が持つようになる」ことによって起きると言う。
限りなくゼロに近いコストで全ての個人が全世界に繋がる表現手段を得た今、そこからこれからの次の10年に生まれてくる新しいものはいったい何だろう?
この本を読んで、そんなワクワクするものを感じた。
![]() | ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる 梅田 望夫 筑摩書房 2006-02-07 by G-Tools |
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コメント
今までの10年は、ネットの利用が浸透して普段の生活に溶け込む10年だったと思います。
次の10年は、これを活用して何かが変わっていく10年なのかもしれませんね。
良くわからないけど、きっと今までと違った使い方が見つかる気がします。
そういえば、昔は「同人誌」が本屋にひっそり置いてあったりしましたね・・・。
投稿: ひろ | 2006年12月13日 (水) 09時52分
がっかりさせるかも知れないけど・・・
先月 新宿に行った時、女の子が「私の詩集を買って下さい」と看板を掲げて立っていました。
300円でした。
買ってる人は誰もいませんでしたが・・なぜ彼女はそう言う手段にでたのか...。
ネットで自分の書いた詩集をどこの誰ともわからない人に読まれるより、買ってくれる人を自分で感じたかったのではないかな と。
でも ネットにアップするより 読まれる数は限りなく少ないですよね。
投稿: EKO | 2006年12月13日 (水) 21時37分
>ひろさん
まさしくその通りじゃないかと思います。
今までの10年が、その前だったら夢だったことが実現できてきた10年ですから、これから実現されてくることも、きっとものすごく楽しいことに違いないと思うんです。そう思うとほんとにワクワクしてきます。
>EKO
へーーー。今でもいるんだ。
でも全然がっかりなんかしないよ。むしろ感動した。
「買ってくれる人を自分で感じたかった」と言うのにはドキっとした。
その子にとっては、顔も見えない人に数多く読まれることより、それが大事だったんだよね。
そういうことをする人がいるってのを忘れちゃいけないと言う感じがします。
むしろ、今だからこそ、街の詩集売りは価値があるようにも思います。
投稿: TODO | 2006年12月13日 (水) 23時15分